未だにデマに騙されている人へ
ISD条項によって主権が侵害されるとか、未だにデマに騙される人が後を絶たない。 ISD条項が危険だと言う人は、酸性雨の主成分で、海岸線を浸食し、温室効果を引き起こし、毎年多数の死者を産むDHMOも規制するよう呼び掛けるべきだろう。
| デマ | 真実 |
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歴史 | NAFTA(1992年12月署名)で初めて導入された。 | 1960年代に投資協定が結ばれ始めた時点から協定に備えられていた(詳細後述)。 |
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導入目的 | 自国企業がその投資と訴訟のテクニックを駆使して儲けるため。 | 協定違反への対抗手段(詳細後述)。 |
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国家主権 | 国家主権が犯される事態がつぎつぎと引き起こされている。 | 原理的に国家主権を犯すことはできないし、犯された事例もない(詳細後述)。 |
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手続 | 中立性に欠け、かつ、十分な審理が為されない。 | 制度的にも極めて中立的で、審理も充分に為されている(ISD条項詳細解説)。 |
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仲裁結果 | 常に米国に有利な結果が出る。 | 公開された仲裁結果には、とくに米国が有利とする証拠がない(詳細後述)。 |
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米韓FTA | 韓国にだけ適用される。 | 双方に適用される(米韓FTAのデマ)。 |
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ソース付きでデマを解説しているページを見ても、洗脳が解けない人がいるのは驚きである。 中野剛志准教授らの主張がデマだと分かった後も「ISDが濫用される危険性がある」と言い出す人はTPP洗脳継続の原理を読んだ方が良い。 まともな判断力がある人なら、常識的に考えてあり得そうもないことが事実だとする主張を見て、それを検証もせずに鵜呑みにはしない。 出典を確認することまでは叶わなくとも、反対意見に目を通すまでは判断を留保するのが、常識人の行動である。 その他、中野剛志准教授らの主張には自己矛盾も多々あり、少し注意深く文章を読めば、その胡散臭さにはすぐに気がつくはずである。 CIAの文書に「人々にUFOを信じさせなくする方法」(嘘に真実を少しだけ混ぜた噂を流しておいて、しばらくしてから嘘をばらすと人々は白けて関心を失う…とか)というものがあるらしいが、中野剛志准教授らの主張はその第一段階そのものにしか見えない。 どうでもいいが、調べてみたらこのCIAの文書は実在しないらしい。国防のために未確認飛行物体を調査したロバートソン委員会のまじめな報告書だったのに、何処をどう取り違えたのか「UFOを馬鹿にするように大衆を洗脳する作戦=プロジェクト・ディバンキング」として噂が広まったらしい。
補足しておくが、次の3つは全くの別問題である。
- TPPに賛成すべきか反対すべきか。
- 中野剛志・東谷暁・三橋貴明らが完全なデマを流布していること。
- 人々を扇動するためにデマを流布して良いかどうか。
中野剛志准教授らの主張がデマであることは、TPPに賛成すべき理由とはならない。 そして、仮に、TPPに反対すべきだったとしても、それはデマを流布して良い理由にはならない。 TPPに反対していることが問題なのではなく、反対する手段としてデマを流していることが問題なのだ。 本当にTPPに反対すべきであるならば、デマではなく、反対すべき真の理由を説明すべきである。
TPPに懸念事項があるのは事実だが、それは次の4つに大別される。
- ほぼ確実に起こる懸念事項
- 確実でないが警戒すべき懸念事項
- 可能性がないとは言えないが警戒するほどでない事項
- 現実的にあり得ない事項
たとえば、漁業補助金の原則禁止は1番目、例外なき関税撤廃は1〜2番目である。 しかし、それら以外の反対派の主張の多くは3〜4番目である。 中野剛志准教授らの流布するデマはほぼ4番目(現実的にあり得ない事項)である。 「ISD条項によって主権が侵害される」などというデマを信じている人は、より簡潔にISD条項を説明したISD条項詳細解説を読むことを勧める。
こちらのページは、中野剛志准教授らの流布するデマに対して個別に反論することを目的としているので、全体として何が言いたいか分かり難いかも知れない。 簡潔明瞭に分かりやすい説明を必要とする人は、ISD条項詳細解説を見てもらいたい。 ISD条項にも手続的には瑣細な問題がないわけではない。 しかし、中野剛志准教授らの主張するような国家主権の侵害だの治外法権だのの類いは完全なデマである。 国家主権は国際法に沿った範囲で認められるのであり、国際法に違反する国家主権など初めから存在しない。 存在しないものを侵害することなど不可能である。
尚、中野剛志准教授には故意にデマを流布している疑いがある。 早稲田大学政治経済学術院の若田部昌澄教授によれば、中野剛志准教授は きわめてきっちり経済学を理解して
よりよく生きるための経済学入門第14講TPP再説とグローバリゼーションP.1 - 筑摩書房 自説にふわさしい理論を的確に選んで
「そう言われればそうかな」と思ってしまうようなところを突いて論を展開してくる
反面教材としてはなかなか悪くない
よりよく生きるための経済学入門第14講TPP再説とグローバリゼーションP.6 - 筑摩書房 人だそうだ。
国際投資仲裁/投資家対国家紛争(仲裁)に関する条文(ISDS条項又はISD条項)
TPPお化けとして、ISD条項が国民皆保険制度を崩壊させるとするものがある。
ISDとはInvestor-StateDisputeの略で、「投資家対国家間の紛争」。
外資が損害を被ったと判断した時、相手国を提訴できるのがこの条項。
「国民皆保険制度」の存在が、外資保険会社に損害をもたらした、と外資保険会社が判断すれば、日本国政府を訴えることができるというとんでもない条約。
そして、裁定は世界銀行傘下にある非公開仲裁委員会で行われるため、上訴することは不可能で、強制力を持つ採決となります。
すなわち、訴訟されれば日本国政府は莫大な賠償金を支払わなくてはならなくなります。
保険に関わらず、何にでもイチャモン付ける事が可能な印籠。
目を覚まして - 楽に生きる
結論を先に言えば、「何にでもイチャモン付ける事が可能な印籠」は大嘘であり、この「外資保険会社」の訴えは通らない。 その詳細は後述する。
このISD条項についても、もちろん政府マスコミは口を塞いでいます。
目を覚まして - 楽に生きる
これは全く事実に反している。
役所も国会議員も秘書も、ちゃんと説明する人は説明しているのである。 個人のブログまで探せば情報はいくらでもある。
事実、検索エンジンで検索してもほとんど検索結果が出てこないような状況。
目を覚まして - 楽に生きる
「検索エンジンで検索してもほとんど検索結果が出てこない」のは検索ワードが間違っているかららしい。
なお、経済産業省をはじめとする我が国政府の公表資料では、「ISD条項」という表現は使われておらず、「投資家対国家紛争(仲裁)に関する条文」といった表現が多く使われている。 また、これを含んだより広い概念として「国際投資仲裁」という用語も使われる。 よって、「日本政府はこれまでISD条項について無防備だった」という物言いも正しくない。 そういう非難をする者が、ググるときにキーワードを正しく設定していないだけなのだ(笑)
「ISD条項」についての考察 - イザ!
仲裁定手続
このISDとは、ある国家が自国の公共の利益のために制定した政策によって、海外の投資家が不利益を被った場合には、世界銀行傘下の「国際投資紛争解決センター」という第三者機関に訴えることができる制度である。
しかし、このISD条項には次のような問題点が指摘されている。
ISD条項に基づいて投資家が政府を訴えた場合、数名の仲裁人がこれを審査する。 しかし審理の関心は、あくまで「政府の政策が投資家にどれくらいの被害を与えたか」という点だけに向けられ、「その政策が公共の利益のために必要なものかどうか」は考慮されない。 その上、この審査は非公開で行われるため不透明であり、判例の拘束を受けないので結果が予測不可能である。
また、この審査の結果に不服があっても上訴できない。 仮に審査結果に法解釈の誤りがあったとしても、国の司法機関は、これを是正することができないのである。
米国丸儲けの米韓FTAからなぜ日本は学ばないのか 中野剛志[京都大学大学院工学研究科准教授] - ダイヤモンド・オンラインP.4
これも故意に誤解を生む表現が使われている。 この文章では、あたかも中立性に欠け、かつ、十分な審理が為されないように見えるが、実態は真逆である。 「審理の関心は、あくまで『政府の政策が投資家にどれくらいの被害を与えたか』という点だけに向けられ、『その政策が公共の利益のために必要なものかどうか』は考慮されない」に至っては、真実と真逆の完全なデマである。
| デマ | 真実 |
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中立性 | 仲裁機関が米国の支配下にあるので米国に有利な判断になりやすい。 | 当事者それぞれの推薦各1名と双方合意の1名の計3名が仲裁人となる極めて中立な人数構成。 |
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審理対象 | 「政府の政策が投資家にどれくらいの被害を与えたか」という点だけ。 | 協定違反の有無と効果を判定する。 |
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情報公開 | 審査は非公開で行われるため不透明。 | ICSID仲裁では、仲裁判断の法的判断の要約は必ず公開されるし、仲裁判断そのものも相当数が公開されている。絶対的に非公開であれば中野准教授らが挙げた具体例はどうやって情報を得たのか? |
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判例拘束 | 判例の拘束を受けないので結果が予測不可能である。 | 協定内容からの結果予想は可能。先例を参照する仲裁判断も多い。途上国の裁判所よりは結果を予想しやすい。 |
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充分な審理 | 上訴制度がないので十分な審理が為されない。 | 仲裁定には当事者の主張の十分な機会を与える義務がある。 |
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不服申立て | 上訴制度がないので判断に誤りがあっても正されない。 | 上訴制度は「判断の一貫性」の問題であって、判断の正しさは別問題。解釈・再審・取消制度はある。 |
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政府関与 | 法解釈の誤りがあったとしても、国の司法機関は、これを是正することができない。 | 仲裁結果を「国の司法機関」が覆せたら協定違反し放題になる。NAFTAでは国内裁判所で取消判断が可能。 |
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詳細はISD条項詳細解説に書く。
仲裁定事例
NAFTA
このISD条項は、米国とカナダとメキシコの自由貿易協定であるNAFTA(北米自由貿易協定)において導入された。 その結果、国家主権が犯される事態がつぎつぎと引き起こされている。
要するに、ISD条項とは、各国が自国民の安全、健康、福祉、環境を、自分たちの国の基準で決められなくする「治外法権」規定なのである。
米国丸儲けの米韓FTAからなぜ日本は学ばないのか 中野剛志[京都大学大学院工学研究科准教授] - ダイヤモンド・オンラインP.5
以下で詳細に検証するが、ISD条項は、協定違反の有無を認定するだけなので、原理的に「治外法権」にはなり得ない。 NAFTAの仲裁定事例には、中野剛志准教授らが挙げた事例にも、経済産業省が公開している資料にも、言いがかり訴訟で企業側が勝った事例は1件も見当たらない。 中野剛志准教授らは、訴えの正当性に関する情報を故意に伏せて、あたかも、「国家主権が犯される事態がつぎつぎと引き起こされている」ように見せ掛けているだけなのだ。 中野剛志准教授は、何故か、事件を特定するために必要な具体的名称を出さない。 「ある神経性物質」「ある燃料企業」「ある米国の廃棄物処理業者」「ある米国企業」と、何の物質か、どの企業か、特定する情報は悉く伏せられている。 金額は具体的に提示しているのだから、うろ覚えで書いているわけではあるまい。 中野剛志准教授は、情報を検証するために必要な事実を故意に隠しているのではないか。 具体的に検証されたら嘘がバレるから、故意に、情報を隠蔽しているのではないか。
Etyl事件
たとえばカナダでは、ある神経性物質の燃料への使用を禁止していた。 同様の規制は、ヨーロッパや米国のほとんどの州にある。 ところが、米国のある燃料企業が、この規制で不利益を被ったとして、ISD条項に基づいてカナダ政府を訴えた。 そして審査の結果、カナダ政府は敗訴し、巨額の賠償金を支払った上、この規制を撤廃せざるを得なくなった。
米国丸儲けの米韓FTAからなぜ日本は学ばないのか 中野剛志[京都大学大学院工学研究科准教授] - ダイヤモンド・オンラインP.5
この事件の真相はISD仲裁事例のEtyl事件を参照のこと。 中野剛志准教授の話を真に受ければ、Etyl社がとんでもないモンスター企業に見える。 しかし、中野剛志准教授は重要事実を隠していたのだ。
- 「MMTの流通を禁ずる新法」はカナダ国内通商協定(カナダの国内法)に違反する法律だった。
- 「MMTの流通を禁ずる新法」はカナダ国内の州からも提訴された。
- 国内通商協定違反を正当化するほど危険性を示す証拠は何もなかった。
- 仲裁定判断が下されたのではなく、カナダ政府が非を認めて和解した。
この事例は、カナダ政府に一方的に非があった事例であり、企業側の損害賠償請求は正当であった。 また、カナダ政府が法律を廃止したのは、カナダ政府の国内判断であり、ISD条項とは関係がない。 そもそも、和解により仲裁定判断が示されなかったのだから、この事件ではカナダ政府には国外部からの強制力は何ら作用していない。 ISD条項とは無関係に、国内法違反だとするカナダ国内の州からの提訴が認められたから、法律を廃止したのである。 つまり、規制撤廃は完全なカナダの国内問題として処理されており、ISD条項によって国家主権が犯されたとする主張は全くのデマである。